失敗学のすすめ 畑村洋太郎

失敗学のすすめ


「痛い話」というのは「人が成功した話」よりずっとよく聞きのの頭の中に入る、人の関心、興味を引きつける不思議な魅力がある。
陰の世界、すなわち失敗体験を伝えることは、教育上大いに意義のあること

プレゼンでも失敗談を話すのが良いだろう。

失敗を隠すことによって起きるのは次の失敗、さらに大きな失敗という、より大きなマイナスとなる
失敗に対するみかとそのものを変えていく必要がある。

失敗性の法則を理解し、要因を知り、失敗が致命的になる前に未然に防止する術を覚える。
小さな失敗の繰り返しが、新たな知識を得る機会となり、次の段階へとすすめる。

ここでの失敗の定義
「人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましいくない、予期せぬ結果が生じること」と定義する

起きてしまった失敗を活かして、そこから真摯に学ぼうとする姿勢があれば、大きな発展の種にすることができる。

ひとつの失敗、ひとつの事故の真の原因をきちんと解明することは、同じ原因で起こる次の失敗を未然に防ぐことができる

失敗情報は人から人へ伝わる中で減衰していく
人に知られたり、表に出たりすることを極端に嫌う「失敗情報は隠れたがる」
失敗情報は単純化したがる 失敗から得た知識をうまく利用するには、正確な分析は不可欠で、伝達は単純化せずに細かい経過や原因を含んで行わなければならない
失敗は神話化しやすい 情報そのもの本質が見えなくなる
失敗情報はローカル化しやすい 隠したがる傾向にあるので周りに伝わらない
失敗情報は客観的の情報では役に立たず、失敗に際してその人が何を考え、どう感じ、どんなプロセスでミスを起こしてしまったかという当事者から見た主観的な情報が必要。結末にいたるまでの脈絡を自分で把握する必要がある。

失敗情報の知識化
六項目による記述

レポートの一番上に、適切なタイトル 日付

事象 どんなことが起こったのか
経過 失敗がどのように進行したのか
原因(推定原因)当事者がその時点でどう感じたか、どう考えたか
対処 失敗に際してどんなことをしたかという対処について
総括 直接の失敗原因だけでなく、誘発する組織としての問題点、あるいは精神的問題など全体を総括しなければわからないものをあぶり出し、記録として残す
知識化 失敗経験から学んだ教訓や知恵

体感を伴わない知識は身につかない。行動して体感することが大切

失敗をしたときの「痛い」「悔しい」という気持ちは、新たな知識の受け入れる素地が出来たということ

すべてを体感することはできないので、仮想失敗体験する。他人の失敗でも、自分の問題に置き換えてリアルに感じることが出来れば実際に体感したのに近い効果が得られる。
こうすればうまくいくという、教え込まれた解への一本道だけでなく、その周辺にある脇道にそれた場合に何が起こるかを知識として頭の中に貯め込むのが、仮想失敗体験に期待できる効果

行動に始まって、体感、実感によって知識の受け入れ素地を築いた後は、自分の失敗体験だけでなく、他人の失敗体験を仮想失敗体験として吸収し、さらに学習した知識などを次々吸収蓄えていく。そのなかで真の理解へといたるのが、創造力養成のための理想的プロセス。

あるものを想像するときは仮想演習をする
様々な問題を想定しながら想像したものに磨きをかける。問題点を洗い出しながら、無理、無駄をのぞく、ブラッシュアップを行う。
批判を嫌ったところで、結局は問題点があれば夜に出てから徹底的に叩かれる
仮想演習は早い段階で徹底的にやる

無理や無駄が生じている部分を排除し、素直な結びつきへと直す作業の基本が仮想演習
その際、もったにないと欲張って全部使う必要はない。思い切って切り捨てることでいいものが生まれる。はじめに創り上げたプロトタイプにこだわる必要はない

創造センスを高めるためには、自分が身を置く狭い世界にこだわらず、より大きな視点から自分のなすべきことを考え、そこから生じる、考えられるだけの悪影響を排除する。このような姿勢に学び、センスを高めるには、対象を認識したところからリンクを外側に張り巡らせる訓練をすることが大切。

創造力センスがある人とない人の違いは、自分の中に蓄えた基礎知識を応用して使いこなせるかどうか
毎日の生活の中で知り得たことと自分のやっていることとをリンクさせる地道な努力が必要。

失敗は必ず起こるもので、これを避けることは絶対に不可能。しかし、どこで起こるかは全体を理解していれば容易に予測できる

失敗は新たな創造行為の第一歩。失敗は恥である、減点の対象であるいまの日本失敗文化そのものを変える必要がある

真の創造は起こって当たり前の失敗からスタートするということを忘れないようにする。

失敗は起こって当たり前正しく向き合い次に活かす。同じ失敗を繰り返さないためにも失敗した当人に優しく接して勇気づける
失敗を無視し、隠し、責任を回避するような風土を少しでも改めよう。

失敗学のすすめ

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