「できる人」はどこがちがうのか (ちくま新書)


諸活動をバラバラの意識で行うのではなく、それらを通して上達のコツを摑まえるという目的意識を持って行う

共通の上達理論を見出そうとする意識の習慣がそもそも希薄なのである


上達の普遍的な理論を学ぶ

3つの技
まねる・盗む力
段取り力
コメント力

技を盗もうとする力は「技を盗もうとする意識」によって向上する
「盗む」事ができるためには、自分の身体で技を試行錯誤した体験の蓄積が必要である
盗むべきポイントの「絞り込み」を自分の身体を動かして行うプロセスが技を盗むための素地となる。このキーは盗む側が自分で作るものである。
技を盗む力の根本は、暗黙のうちに行われている事柄を認識し、表面化させるという作業である。「暗黙知(身体知)をいかに明確に認識するかに」かかっている
暗黙知形式知の循環するサイクルを作ることが、知識を想像する上で最大のポイントとなる
技を盗む力は、暗黙知を自分の認識力で自分にとっての形式知とし、暗黙知へと染み込ませる作業である。
この循環には、的確な要約力、質問力、コメント力が大きな力を発揮する。仕事自体も段取りによって組まれているので、技を盗むということは段取りを盗むということである。

自分でも気づいていなかったこのに気づくためにはなんといっても他者の存在が必要である。暗黙知を刺激してくれる

暗黙知とは、言葉を変えれば身体知である。身体においては認識しているが、明確に言語化されていない事柄に多くの意味が含まれている。

3つの力を結びつけているのが要約力
上達するには課題をはっきりさせる必要がある。重要な課題を絞り込むのに必要。自分にとっての課題を様々の中で重みづけをして、重要性の高いものをピックアップして優先順位をつけ、トレーニングメニューとして時系列順に並べる(カリキュラム構成力)
要約力の基本はパレートの法則、80%の重要事項を優先する

技術の8割を閉める基本を反復練習して完全に技化する。常に出来るということが技である

瞬間多読術
自分の関心ごとやテーマ、あるいはキーワードをハッキリ持つ


質問力の高さを測る一つの基準は、その質問の裏にある課題意識の強さである。

「離見の見」をしっかりと体得する
「目を前に見て、心を後ろに置け」自分本位のひとりよがりでことを行なっているときは、意識は前につんのめりがちになる。一息「間」を入れて、大きく息を吸ってゆったりと息を吐きだす。意識がスーッと覚めて、心が後ろに置かれる感覚を味わうことができる。冷静に状況を捉え直す技法。常に広く周りに意識と視線を向けること習慣化したところに生まれる技術である。習慣化によって、視野が広がる

第2章

上達の理想のプロセスは、ベーシックな力を身につけた上で、自分の癖を技化して得意技となし、自分のスタイルを確立することである

欲望は他者の欲望の模倣である。欲望が二者関係にではなく、三者関係に基づくものである。あこがれにあこがれる関係性である。

自分にあったスタイルを選択するということ。この選択の意識が向上心を加速させる。ある領域において経験した上達のプロセスを、別の領域にチャレンジするときに生かすことができる認識力が重要。

それぞれのスタイルが違っていてもその間にあるスタイル間コミュニケーションがそれぞれに向上と効果をもたらす

第四章

吉田兼好 徒然草

達人のみが共有しあえる認識を重視している。
名人という人が掴んでいる上達のコツには、領域を超えて共通するものがあるはず

今まさにしようとしていることへの明晰な認識の持続、集中が上達のコツ。明晰な意識を強く持ち続けること自体を技として修練することがいっそう重要

意識、エネルギーを一点集中させる

道を極めつということは、単にその領域の事柄が出来るというだけではなく、ある種の境地をも獲得するということである。

自分が知らないことが何であるかを上手に知ることができない。

自分が物を知らないということに気づくにはそれなりの水準が必要だ。上達するためには、自分がまだ会得していないことに対する予感やビジョンを持つことが重要である。自分がよく知らないのだという認識もなく、また、道へのヴィジョンを立てる習慣もなければ、やることにロスが多くなり上達はままならなくなる

先達は自分にとっての道の方向を照らしてくれる存在である

不安に基づいて動くのと、確信に基づいて動くとのではパフォーマンスが変わってくる

あらゆるものを上達論のテキストとして捉えようとすることによって、上達のコツを盗む目が磨かれてくる

第五章

技を修得するためには繰り返し練習し、量が質に転化する瞬間を見逃さないことである。漫然とただ機械的に反復するというのでは、十分ではない。自分のやっていることを意識化する意識の鮮明さが、上達の速度を早める。
物事をうまくやることを?まえる瞬間がある。こうした瞬間は、一定程度の時間、集中力が持続したときに訪れる

集中力とは意識のコマ割り
一秒間あたりのコマ割りが多くなれば、流れる時間は遅く感じられる。

脳のコマ割りを増やすためには、早いテンポの集中した環境に身をおくのが早道である

重要なことは、脳の活性化状態を最高度に上げるということ以上に、脳の活性化をはかる軸を自分の中に作ることである。自分の意識のコマ割りの速度が現在どの程度であるかを知ることによって、自分が今やっている作業の質と脳の活性化との関係が適切かどうかを判断することが出来る

自分の意識がどの程度であるか、自分の中の10人中何人が働いているか、どのギアに入っているかなどを把握する習慣を身につける方が、有効である。自分の意識の状態に対しての意識を、正確に持つ習慣をつけること。

通常ならば見過ごしやすい微妙な違いに気づくこと。こうした気づきを与える身体感覚を具体的な現実の体験を積み重ねることによって研ぎ澄ましていくこと

幅広い周波数を受け止めるチューニング能力を持つこと

間隔を鋭敏にし脳が覚醒できるような運動は、その人の身体性や仕事の質によって異なる。各人が選び取るスタイルに合わせて、自分の身体感覚を手がかりにしてフィットする運動を見つけ技にしていく

第六章

集中に入るのがわかるときある。それまでの時間はゴールデンタイムに入るための助走期間であるような、高い集中状態が訪れることがある。集中に入ること自体が一種の技なので、こうした集中に入ることを偶然的な出来事ではなく、技化する必要性が生まれる

領域を超えてスタイルを作っていくという意識が上達には必要。ランニングも書くこととの間に共通の課題認識をもって望む。
全く異なる性質の活動出会っても、自分の身体だけは共通している。身体の基本的な特性や呼吸の仕方は、どのような諸活動にも現れてくる
身体性を共通基盤として、自分の諸活動をクロスさせて、上達倫理を生活全般で連動させる。これが技となれば、すべての諸活動が相乗的に作用し合い、しかも快適に過ごすことができる

些細なコトでもいい。そこでの上達の経験を、普遍化しつつ他の領域への上達法へと応用していけることが「できる人」とそうでない人との違いである。



共通の上達理論を見出そうとする意識の習慣がそもそも希薄、諸活動をバラバラの意識で行うのではなく、それらを通して上達のコツを摑まえるという目的意識も持つ。上達経験は暗黙知から形式知へ、形式知から暗黙知へとの循環サイクルを作り徐々に自分のものへとし昇華させる。暗黙知を理解するにはある程度自己の体験を通さないとわからない。その自分の身体経験から、必要な質問事項、いわゆるコメント力、要約力を発揮することにより、コツ、暗黙知を知り得ることができるようになる。そして、それを形式知に落としこむ。これらの経験を通して普遍化し、他の領域への上達法として応用可能な人が「できる人」とそうでない人の違いだ。

「できる人」はどこがちがうのか (ちくま新書)

「できる人」はどこがちがうのか (ちくま新書)