本を読む本 (講談社学術文庫)

外山滋比古 訳

読むという行為には、いつかなる場合でもある程度、積極性が必要である。

キャッチすることとは積極的な動きである。

読書には、情報を得るための読書と理解を深めるための読書がある

学ぶのは学習者自身である。教師と学生の関係は、医者と患者の関係によく似ている

読書は手助けを借りない「発見」と同じで、姿の見えない教師から学ぶこと

初級読書
文字がわかり、文法がわかり、パラグラフの意味がわかり、一通り最後まで読めること

点検読書

ある一定の時間内に一冊を読み終える

意欲的な読者になるには
目的を持って読む。本からの見返りを期待して読む

文章を指でなぞりなから読んでいく、徐々に指の動きを早くしていって頑張って目で追えるようにする

読んでいる間に質問をすること。そして、その疑問に自分自身で回答するように努めること
1.全体として何に関する本か
2.何がどのように詳しく述べられているのか
3.その本は全体として真実か?あるいはどの部分が真実か
4.それにはどんな意義があるのか


読み手の側から問いかけをし、これに自分で答えようとする努力がなくてはならない

線を引く
星印を付ける
キーワードをまるで囲むなど
比較参照せよ .cfをいれるなど

点検読書の際には それはどんな種類の本か、全体として何を言おうとしているのか、そのために著者はどのような構成で概念や知識を展開しているのかを記録しておく シントピカル読書をするために覚書を書く

全て熟練した技術を持つ人というのは、それぞれの技術の持つ規則通りに仕事をする習慣を身に着けている人である

まず別々の動作をうまくこなせるようになるまではそれを結びつけて1つの調和した運動はできない。 一歩づつ進んでいく必要がある

分析読書 第一段階 何についての本であるかを見分ける

第一の規則
いま読んでいるのがどんな種類の本かを知らなくてはならない。小説、叙事詩、フィクション、知識を伝える教養書など

まず点検読書
とにかく本をざっと読んで調べてみる。書名、サブタイトル、目次を読み、著者の序文、まえがき、索引に目を通す。出版者の書いた紹介文がついていたらそれも読む。

ある各章の見出し一覧は、表題の意味を敷衍(ふえん)し説明する役目をしている

分析読書の第一規則に従うためには「本の種類とは何か」を知らなければならない
フィクションと知識を伝える本、つまり教養書との2つに大きく分類した。

理論的な本と実践的な本
知識と行動

事実を知ることと、方法を知ることの2つになる
理論の本は事実を教え、実践の本は方法を教える、この本は理論ではなくて、実践の本

点検読書のやり方として、本の見出しや索引だけではなく、本文中のなかで要約と言える箇所や本のはじめと終りの部分、他の主要な部分も読んで置かなければならない。
科学者は自分のやった実験結果を使うし、哲学者は人間の共通体験を用いる
その本に出てくる経験が、どんな種類のものかがわかれば、その本が哲学か科学かがわかる
それぞれの種類にふさわしいやり方で読む技術を学ばなければならない。

第二の規則
本の全体的統一を、2,3行かせいぜい数行の文に表してみる
著者の意図、何を言おうとしているのかをはっきりさせる

第三の規則
その本の主な部分を述べ、それらの部分がどのように順序良く統一性を持って配列されて全体を構成しているのかを示すこと
本の設計図、つまり構想を見つけ出そうとする努力をしなくてはいけない。それを見つけるのが読者の仕事である、
アウトラインをつかむ
全体の統一をしっかり把握すれば、全体を構成している主要な部分は自ずとあ明らかになってくる

どの程度まで分析読書をするかは、その本の性格と読書の目的による

とにかく重要なのは読者自身によるアウトラインを作ることである。

第四の規則
著者の問題としている点は何であるかを知る
著者というものは一つないし、一連の問題から出発するものだ。その本が答えようとしている質問が何であるかを知らなければならない。読者は、統一と述べたり、部分を見つけたりするときにした仕事とこの規則の内容とがある意味で重複していることに気づくだろう

分析読書の第二段階 内容を解釈する
第五の規則
キーワードをみつけ、著者と折り合いをつける

単語の意味も様々あるが、文脈よりその意味を推定し、著者と読者の相手で共通の単語とする
重要な単語を見つけ、、意味の変化を見極め、単語の表す意味を正確につかむ

第六の規則
重要な文を見つけ著者の主要な命題を把握する

理解できない箇所がどこかをはっきりさせる。「わからないことをまず知ること」が本を読む時の重要な作業の一つである

第七の規則
一連の文の中に著者の論証を見つける。または、いくつかの文を取り出して、論証を組み立てる

論証とは、ある結論を導くための根拠、理由を示す一連の文のことである
まず重要な論証を述べているパラグラフを見つける。パラグラフが見つからないときはあちらこちらのパラグラフから文を取り出し、論証を構成する命題が含まれている一連の文を集めて論証を組み立てることである。

第八の規則
著者が解決した問題はどれで、解決していない問題はどれかを見きわめる。未解決の問題については、解決に失敗したことを、著者が自覚しているかどうか見定める


分析読書の第三段階 知識は伝達されたか

A,知的エチケットの心得
第九の規則
「概略」と「解釈」を終えないうちは、批評に取りかからないこと

第十の規則
喧嘩腰の反論は良くない

第十一の規則
批評的な判断を下すときには十分な根拠をあげて、知識と単なる個人的な意見をはっきりと区別すること

B,批判に関して特に注意すべき事項

第十二の規則
著者が知識不足である点を、明らかにすること

第十三の規則
著者の知識に誤りがある点を明らかにすること

第十四の規則
著者が論理性にかける点を明らかにすること

第十五の規則
著者の分析や説明が不完全であること点を、明らかにすること

多くの名著は互いに関連を持つだけでなく、ある順序で書かれている。作品が書かれた順を追って読むというのは、付帯的読書の基礎的、常識的な心得である。言葉、用語、主張、理解を助ける大きな文脈となってくれる

辞書や百科事典も完全ではなく、時代背景や編集により100%正しいとは限らない、異なる時期に書かれた、2種類以上のものが参考に出来ればなお良い

小説の読み方
作品の好き嫌いを言う前に、読者はまず作品を誠実に味わう努力をすること。味わうとは作家が読者の感情や想像力に働きかけて作り出そうとした経験をすることである。

シントピカル読書

読む本ではなく、読者、および読者の感心事が最優先される
点検読書で読むべき本、論文を見極め、自分の追求している主題に関して、なにか重要なことを述べているのかを見きわめる。確実に知るためにはもう一度読み直さなければならない。
分析読書のように時間をかけて、その本を完全に理解する必要はなく、自分にとって必要な箇所を読みなおす

準備作業、研究分野の調査
1.図書館の目録、他人の助言、書物に付いている文献一覧、要約などを利用して、主題に関する文献表を作成する

2.文献表の書物を全部点検してどれが主題に綿密な関連を持つかを調べ、また主題の観念を明確につかむ

準備作業で集めた文献を用いて
1.準備作業で集めた関連書を点検し、もっとも関連の深い箇所を発見する
2.主題について、特定の著者に頼らない用語の使い方を決め、著者に折り合いを付けさせる
3.一連の質問をして、どの著者にも偏らない命題を立てる。この質問には、大部分の著者から答えを期待できるようなもので無くてはならない。しかし、実際には著者が、その質問に表立って答えていないこともある
4.様々な質問に対する著者の答えを整理して、論点を明確にする。相対する著者の論点は必ずしもはっきりした形で見つかるとは限らない。著者の見解から答えを推測することもある。
5.できるだけ多角的に理解できるようなに、質問と論点を整理し、論考を分析する。一般的な論点をしぼってから、特殊な論点に移る。各、論点がどのように関連しているかを明確に示すこと

大学教授による読書方法の指南書、本のレベルも様々、目的、読者レベルも様々。読書は頭から読んでいくという画一されたものではなく、状況、段階、目的、求めるものにより様々な読み方がある。読書とは受動的なものではなく、積極的なものである。初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書という読書方法を紹介。初級読書は文字、文法がわかりとりあえず最後まで通読できる読書。中学生になる前にはほぼ到達できるレベル。点検読書とはある一定の時間内に、その本の書いてある主題、論点を見出す読書。大量本を読まなければならないとき、どの本を徹底的に読むべきか(分析読書をするべきか)を見きわめるのに必要になる。分析読書とは徹底的に一冊の読みこむ読書であり、手順を踏んで著者の命題、論証を明らかにし、著者と対話する。どの点が納得行くのか、いかないのかを論理的に考え、批評する。シントピカル読書とは、複数の本、文献から、読者自身がある命題(疑問点など)に対する答えを見出す、解決する読書。先の点検、分析読書ができることが前提。すべてを分析読書すれば理解は深まるが時間がたりない。点検読書で読むべき物、箇所を見出す。主題に対する質問を準備し、著者の解答を見出す。複数の本から、様々な質問に対する答えを読み出し、整理し、論点を明確する。そして、自分なりの結論を見出す。

本を読む本 (講談社学術文庫)

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