外山滋比古:忘れる力思考への知の条件

 
11.記憶と忘却は、敵対関係にあるのではない。精神活動が実り多きものになるためには、手を取り合って協力する仲間であると考えるのが妥当である
12.他人がやらないことをしているという意識は、若い者の虚栄心をくすぐる
16.闇雲に知識をありがたがっていると、その間の微妙なところが見えなくなる。多すぎる知識、新しすぎる知識は人間の判断力を弱め、思考力を殺ぐおそれがある
22.活発な忘却によって、頭の中のゴミ、がらくたを処分してしまえば、頭には広々とした自由な空間が出来る。そこで独自の考えを生み、育てることが出来る
31.暗記した知識は一時的にしか役に立たない。忘却をくくり抜けた後に残った知識が、人間を作る。忘却は、記憶を消化、洗練するのに必須なメンタル活動である
44.記憶はすべて時と共に変化、変貌、風化するようになっている。どんなに記憶の良い人でも、この記憶の変化と無縁であることはできない
53.収穫逓減の法則 同じ畑で、同じ作物を作るとだんだん収穫が落ちてくる。→同じ勉強をしないで、別のことをやる。マルチプロジェクト、シングルタスク
77.記憶は吸収する作用であるが、忘却は不要な者を排出する浄化作用である。どちらも一方だけでは存立し得ない
82.忘れ上手になる。→目の前のことだけに集中し、その前後、周囲については忘れる
103.記憶の棚上げは、注意しないと棚卸しを忘れてしまい、混乱を起こす。→メモした者は見返すシステムが必要
110.すべてのものが、忘却の風化作用を受けて美しくなる
148.「我を忘れる」のは最高の忘却。心身共に爽快、清新になる
155.忘却は時間の流れに沿って、記憶、知識などを少しずつ典型化、理想化させていきながら、ゆっくり変質もさせていく
163.忘却は、ただ記憶を整理するだけでなく、記憶を洗練し昇華させる
164.忘却は、整理には優れているが、やはり自分で物事を作ることはない。記憶が取り入れたものについて、純化、洗練、整理をすることで生きる
 
忘却は、記憶を整理、純化、洗練する。どんどん知識を取り入れて、忘れる。忘却をくぐり抜けたものが知恵となり人間を作る。忘却だけ、記憶だけのどちらか一方では成り立たない。 忘れることを恐れずどんどんインプットし、忘れて空いたスペースで十分な思考をする。忘却と記憶のサイクルを回していくことが大切

 

忘れる力 思考への知の条件

忘れる力 思考への知の条件